山奥の集落に一匹の狐が住んでいた。普段は見晴らしのいい岩の上で村人の事を見ていて、時々化かしたり悪戯をすることもあったが、急な坂で荷車を引いていると一緒に押してくれることもあったという。
しかし、この村に鉄道が通ることになり、工事によってキツネの住処もなくなってしまった。
鉄道が開通すると村は賑やかになったが、不思議な現象が起こり始めた。路線上に大きな牛が寝そべっていたり、大きな岩が落ちていたりするのである。停止信号を示す赤く点灯したカンテラが揺れていたこともあった。あわてて列車を止めて機関士や車掌が確認しても、牛や岩やカンテラなどはどこにもなかったという。
ある日、列車がトンネルを出ると、また線路に牛が寝そべっていた。汽笛を鳴らして通過しようとしたが、牛は動かず、列車とぶつかってしまった。列車を止めて調べてみると、牛の姿はどこにもなく、一匹のキツネが亡くなっていた。それは、鉄道工事によって住処を追われたキツネだった事が後に判明。
村人と鉄道関係者は相談して、このキツネを祀り、これからは線路を守ってもらうべく神社を創建し
神主を招いて盛大に創建の式を行なってからは、不思議な現象は起こらなくなったという。
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