諸事情あって、5年間も封印されてしまい、お蔵入りとなりかけていた作品。とはいっても、よくあるホラー映画のように、いわくつきで封印されたわけではなく、権利か、経済的事情のようです。
そんなオムニバスサスペンス、またはオムニバスホラーなんですが、正直、サスペンスやホラーと言っていいのかわかりません。極論すると、ファンタジーなのかも。
ただ、何故か香川照之や村上淳、葛山信吾がそれぞれ出演しているので、演技のレベルは高いです。
演技のレベルが高い作品が面白いとは限りませんけどね。
『遠い記憶』
新進作家の倉本は、母親と二人で暮らしていた。ある日、テレビの取材で盛岡に足を運び、スナックに勤める相沢世里子という女性に出会うが、突然、子どものころの記憶がよみがえる。
シネマトゥデイより。
故郷での取材で訪れた盛岡で、ある人物に出会ったことで子供の頃の記憶が蘇えるという作品ですが、全体的におとなしい。
取材で訪れた体のためか、ドキュメンタリーっぽい画質に感じます。
ある人物というのがあらすじに書かれてしまっていますが、相沢世里子という女性。スナックで出会うんですが、「ここでは、架空の名前は困ります」と言う瞬間はぞっとさせられます。セリフだけだと別になんてことはないセリフのはずなんですけどね。
結局、世里子をガイドに盛岡を巡ることになるんですが、頭痛とともに謎の記憶が蘇えっていきます。
結局、子供の頃の記憶はトラウマを避けるため、改ざんした記憶らしいことはわかるんですが、いったい何があったのかという部分がキモ。
母親役として、吉田日出子が出演しているんですが、ほんの少ししか出ていないのに存在感が半端ないです。
『前世の記憶』
頭痛に悩まされていた修子(中村美玲)は精神科での催眠治療を受ける。だが、退行催眠によって蘇った前世の記憶が、修子を恐怖へと導く……。
Movie Walkerより。
蘇える記憶が少年のもので、殺人事件に関係していることがわかるという内容。
母、祖母、自分が殺された少年の記憶が自分の中に入ってくる感じは、本当に怖い。
最後に知る真相が導き出す結果がさらに怖いんですが、多分、この話は共感がしづらいような気がします。
他の2話と違って、どことなく日常ではないので、主人公の修子に入り込みにくいんですよね。
正直、最後の最後でモヤモヤしたものが残りましたが、それなりに怖い作品でした。
『緋い記憶』
東京でデザイン事務所を経営する山野(香川照之)のもとに郷里・盛岡の友人が訪ねてくる。彼は古い住宅地図を手渡すが、それは記憶に閉じ込めた街で、山野が少年のときに出会った少女の家は空き地とだけ記されていた。
シネマトゥデイより。
結果から言えば、個人的には一番怖いと思った作品。
信じていた記憶が間違っているなんてことや、そこにあった建物が以前は何だったか思い出せないなんてことは誰しもあると思いますが、それが自分の根幹を成しているとしたら。
あまりにも衝撃的なことや、罪悪感で記憶をすり替えるなんていう話も聞きますが、この話は結構きつい。
仲の良かった少女が自分を責める目で睨みつけてくるシーンがあるんですが、あまりにも印象が強くって、可愛いだけに怖さが増しています。
オチはベタですが、駄作と言うよりも、やっぱりそうなってしまうのかという納得感の方が強かったですね。
前述の通り、3話ともキャストが演技力の高い役者が多いので、ストーリーも平凡だし、特に斬新な部分もありませんが、よくまとまった作品でした。
淡々としているので、驚きがないと楽しめない人たちにはつまらない作品かもしれませんが、良質な作品と言っていいでしょう。
正直、なんでこのレベルの作品を作れる制作会社が倒産しちゃうのかという事の方が謎ですけどね。
オススメ度(10段階)……★★★★★
(役者のギャラが高過ぎたんじゃないかと思う作品)
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